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どろどろちゃん

Column

岡先生

コラム

岡村地質のマスコットキャラクター、”どろどろちゃん”と”岡先生”が地質・地盤についてわかりやすく解説します! ほぼ毎月更新の会長ブログも見てね!

02 土壌汚染とは

重大な土壌汚染は、
人体への被害をもたらすとともに、
土地の資産価値の低下、
企業評価の悪化をもたらします。

重大な土壌汚染が発生した土地には、担保がつかない、あるいは風評被害により売買が進まないなどの弊害も出てきます。このため「土壌汚染対策法」が施行されて以来、土壌調査を依頼する土地所有者が増えてきています。環境意識の高まりを背景に、今後さらに汚染処理が進むものと期待されます。また、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査は、環境大臣が指定する調査機関(指定調査機関)が行わねばなりません。

土壌汚染とは

揮発性有機化合物や重金属等有害物質の不適切な取扱いによる漏出や排水が、地下に浸透し地盤や地下水を汚染する事。(ここで言う有害物質とは、人類や野生生物に摂取されると健康に悪影響を及ぼすおそれのあるもの。)

土壌汚染とは

鉱山開発による土壌汚染

汚染場所 県名 年代 汚染物質
足尾銅山と渡良瀬川流域 栃木 1880~1973 硫酸銅
神岡鉱山と神通川流域 富山 1900~現在 カドミウム
土呂久鉱山 宮崎 1918~1964 亜ヒ酸

工場排水による大規模汚染

汚染場所 県名 年代 汚染物質
水俣湾周辺 熊本 1953~1996 有機水銀
阿賀野川流域 新潟 1964~1996 有機水銀

市街地における土壌汚染

汚染場所 県名 年代 汚染物質
江戸川区
栗山町
阿南市
東京
北海道
徳島
1970年代 クロム鉱滓
福山市 広島 1900~現在 水銀、PCB等
八王子市 東京 1918~1964 無機水銀

ハイテク汚染

汚染場所 県名 年代 汚染物質
日野市、八王子市、府中市
太子町
高槻市
東京
兵庫
大阪
1980年代前半 クトリクロロエチレン
(地下水中)
君津市 千葉 1987 トリクロロエチレン
(地下水中)

旧日本軍の毒ガス製造による土壌汚染

汚染場所 県名 年代 汚染物質
広島市南区 広島 1993 砒素
(毒ガス原料)
寒川町 神奈川 2002 毒ガス
神栖町 茨城 2003 砒素
(毒ガス研究材料)

土壌汚染対策法とは

土壌汚染による人の健康被害の防止や、土壌汚染の調査・浄化を目的として2003年2月に施行されました。

土壌汚染対策法について(法、政省令、告示、通知)

土壌汚染調査は、現在以下の①~③の契機で実施されています。
① 国の法律に基づく調査(土壌汚染対策法に基づく調査)
② 地方自治体の条例・指導要綱等に基づく調査
③ 土地取引・環境方針等に伴う自主的な調査

特定有害物質と基準値

種別 特定有害物質 溶出量指定基準 含有量指定基準
mg/l mg/kg
第1種特定有害物質
(揮発性有機化合物)
四塩化炭素 0.002以下
1,2-ジクロロエタン 0.004以下
1,1-ジクロロエチレン 0.1以下
1,2-ジクロロエチレン 0.04以下
1,3-ジクロロプロベン 0.002以下
ジクロロメタン 0.02以下
テトラクロロエチレン 0.01以下
1,1,1-トリクロロエタン 1以下
1,1,2-トリクロロエタン 0.006以下
トリクロロエチレン 0.01以下
クロロエチレン 0.002以下
ベンゼン 0.01以下
種別 特定有害物質 溶出量指定基準 含有量指定基準
mg/l mg/kg
第2種特定有害物質
(重金属類)
カドミウム 0.003以下 45以下
六価クロム 0.05以下 250以下
シアン 不検出 遊離シアン
50以下
水銀 0.0005以下 15以下
アルキル水銀 不検出
セレン 0.01以下 150以下
0.01以下 150以下
砒素 0.01以下 150以下
ふっ素 0.8以下 4000以下
ほう素 1以下 4000以下
種別 特定有害物質 溶出量指定基準 含有量指定基準
mg/l mg/kg
第3種特定有害物質
(農薬類とPCB)
シマジン 0.003以下
チオベンカルブ 0.02以下
チラウム 0.006以下
PCB 不検出
有機リン 不検出

調査対象となる土地

・有害物質を取り扱っていた特定施設が廃止された土地(事業者による自主的な調査)
・一定規模(3,000㎡)以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染の恐れがあると 都道府県知事等がが認めるとき(都道府県知事命令による調査)
・都道府県知事等が土壌汚染によって人の健康に被害が及ぶおそれがあると認めた土地(都道府県知事命令による調査)

具体的には・・・

重金属類を汚染物質とする場所

①重金属類の採取鉱山及びズリ場(低品位の鉱石の捨て場)
②鉱山の排水放流河川、下流の農用地
③鉱山の精錬工場、原料ヤード
④鉱石の輸入ヤード(港湾の一時ストックヤード)
⑤重金属類を原料とする化学工場、メッキ工場、表面加工工場
⑥大学など試験研究機関の施設
⑦国、都府県などの試験場、検査場
⑧民間の研究施設
⑨病院、医院
⑩一般廃棄物の焼却設備
⑪産業廃棄物の積替え場所及び中間処理場
⑫廃棄物の最終処分場(ごみの埋立地)
⑬下水処理場
⑭①~⑬までの跡地
⑮ごみの不法投棄場所
⑯履歴が不明な再開発地
⑰以上①~⑰関連河川、港湾

揮発性有機化合物を汚染物質とする場所

①揮発性有機化合物の製造工場
②半導体などを製造するハイテク工場
③金属や機械部品を脱脂、洗浄する工場
④脂肪、樹脂、塗料など溶剤を使用する工場
⑤ドライクリーニング工場及び街中のドライクリーニング店、コインランドリ
⑥揮発性有機化合物関係の研究、試験、検査機関
⑦①~⑥までの周辺地域と地下水流の下流側
⑧①~⑥までの跡地、周辺地域と地下水流の下流側

農薬類を汚染物質とする場所

①ゴルフ場
②各種のリゾート地
③農用地、牧用地、果樹園
④使用禁止農薬類の保管場所
⑤①~④までの雨水、排水が流入する河川

その他の場所

①軍事基地
②軍事基地の跡地
③戦場(河川及び港湾を含む)
④戦場の跡地

土壌汚染調査の必要性

土壌の汚染を発見し、その汚染に対する措置を行う(汚染のリスクを低減する)ことを目的に、法の整備が行われてきました。土壌汚染調査は土壌汚染に関するリスクを評価して管理する(=適切な「リスクマネンジメント」を確立する)ための調査といえます。

土壌汚染調査の大まかな流れ

土壌汚染調査の大まかな流れ

*PhaseⅠ,Ⅱ,Ⅲ・・・・米国材料試験規格であるASTMに準ずる環境サイトアセスメント。Ⅰ・Ⅱは土壌汚染対策法の土壌汚染状況調査におおむね相当します。

汚染除去等の措置

土壌汚染状況調査を行った結果土壌汚染が確認された場合には、当該土地の区画を「要設置区域」(その土地が特定有害物質によって汚染されている区域)として都道府県知事が指定し、台帳に登録して公示される事となります。土壌汚染対策法の趣旨の一つは『汚染された土壌を適切に管理していくこと』です。そのため、健康被害のおそれのある要設置区域では、土地の汚染状況と利用の仕方に応じて、地下水の水質の測定、封じ込めなどの汚染の除去等の措置が指示されることになります。

土壌汚染対策法に基づく
土壌汚染の調査・修復措置は、
時間とコストがかかります。
しかし、土壌汚染リスクを無視して対策を怠ると、
後からでは解決が難しい事も事実です。
リスクに過剰反応せず、その土地土地のリスクに見合った
適切かつ合理的な対応を行っていくことが、
調査機関の義務である、
と岡村地質は考えます。